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  • もじかきくらげ

第7話 天使の話:2

更新日:2021年9月16日

「じゃあ、まずはЕляが知りたいことを教えて」

 ТоняはЕляをまっすぐ見つめ、質問が始まる。Еляがらくがき帳を開いた。

「あのね、これはまず、要望なんですけど」

「うん」

「えりゃは、子ども扱いをされすぎだと思う。最近は前とちがって、家事も、Vtuber活動もがんばってるし。自分でお料理したり、一人でもお散歩に行ったりしたい」

 Тоняは睫毛の下に指をくぐらせ、少し悩んだあとに答える。

「……そうだね。僕はЕляに対して過保護になりすぎているところはあった」

 紅茶を混ぜて口をつける。Еляは兄が食事をしているところを初めて見た。

「分かった。僕といないときに火を使うのも、外出するのも許そう。Еляもすっかり大人になったしね」

「うん、ありがとう」

 Тоняがまた優雅にスプーンを回す。Еляもチョコレートプリンを大事そうに食べ始める。固めのプリンが好きなのは把握済みらしかった。

「じゃあね、にいにが言う『話すべきこと』っていうのは、おじさんも知ってるの?」

「……まあ、ほとんどは」

 ばつが悪そうに言い、Тоняは紅茶を飲み干してしまった。やっぱりТоняとИзяはあまり仲が良くないんだろうな、とЕляは紅茶を注いでやりながら思った。

「……じゃ、そもそもにいにはえりゃの本当のお兄さんなの?」

「ああ……血は繋がってないね」

 さらに気まずそうに顔を背けられたので、Еляは回り込むように体を傾けて笑って見せた。

「でもえりゃはにいにのこと本当のお兄さんみたいに思ってる」

「そっか。それは嬉しいね……」

 Тоняもつられて恥ずかしそうに笑った。Еляはプリンを小さくすくってまた口に運ぶ。Тоняの分のプリンもあるのだが、まだ冷蔵庫の中で冷やしたままだった。

「じゃあ、この間えりゃが聞いた知らないお部屋は何?」

「それを話すには。僕の『話すべきこと』を先に話す必要がある」

「あれってそんなに大事なんだ」

「大事なんだよ。それはちゃんと最後に話すから、安心して」

 プリンも紅茶も全部無くなって、空の皿だけが残った。しばしの沈黙が流れ、ついにЕляが切り出した。

「────Еляは、人間じゃないなら『何』なの?」

 Тоняは目を伏せて少し微笑んだ。そしてまた愛しい家族に、Еляに向き直って、話を始める。

「では話そうか。僕の『話すべきこと』を」


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