ある森の中に、小さな家があった。誰も知らない道を抜けたところにある、赤い屋根の家だ。
確かにそこに赤い屋根の家はあったが、今その家は、ちょうど業火に包まれて焼け落ちる最中だった。家の前には、2人の男が少し離れて燃え盛る炎を眺めている。
「全く、大きくなったものだよ。君が作ったものをこんなに容易く壊せる程になるなんて……天界も惜しいことをしたものだね」
Изяが、飛んでくる火の粉を払いながら言った。あまりの暑さに、顔の上部につけていたマスクを外し、フードを外し、ローブを脱ぎ、軽くなった体をバサバサ仰いでいる。
対するТоняは特にИзяを気にすることなく炎をじっと見つめていた。照らされて白い髪を暴風になびかせる背中だけでは、彼の表情は分からない。
「早く仕事に戻ってください」
「つれないね。ここに来るのももう最後だよ? もう少し話してくれたっていいじゃない」
「神がお待ちです」
Изяは心底もったいなそうにしたが次の瞬間には光を纏ったような真っ白な姿で、森の景色に溶けようとしていた。どうやらこちらが天使としての本来の姿らしい。
「しょうがないね。私は先に帰っているよ。気が済む前には帰りなさい」
そう言いながら、Изяは微笑み姿を消した。
その後しばらくの間、Тоняは自分が暮らしていた家が焼け落ちていくのをじっと眺めていた。
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