top of page
  • もじかきくらげ

第11話 天使の話:6

更新日:2021年12月22日

「Еляは『天使』として人間界に降り立ち、まず事情聴取から始めた。最初Еляの姿を見た人間は、生まれて初めて見る人知を超えた光景に戸惑った。でもЕляがあらかじめ神から授かっていた『奇跡』を使って食糧を生み出すと、ようやく素直に話を聞く気になったららしい」

 カーテンの向こうで木々がまたざわざわ揺れている。窓に葉がぶつかる音を横目に、Тоняは話を続ける。

「人間から食料不足について詳しく聞き、Еляは調査を続ける。そして、人間たちには1日に1度祈りを捧げる時間を作らせた。感謝の気持ちや生き延びたいという祈りが、分かりやすく言うと、『神力』……この場合は『天使力』だけれど、そういうものの大きさに影響するんだ。特にЕляは下級の天使だから、人間よりスペックは高いけれど『神力』がないと地上では上手く生きられない。『天使』が地上で『天使』として活動するには『信仰』されないといけない。そういう制約もあるからね」

「サボったらいけないしね」

「まあ大体そういうこと。それで、調査をした結果、作物とか家畜に病気があることが分かった。新しく、自然に発生したものらしくて、人間が知らないうちにかなり広がっていたらしい。Еляはこれを神と僕たちに報告して、僕たちが対処を決めた。衛生状況が良くなるように体や道具を清めさせたり、病気になりにくい植物を作って与えたり……もちろん、実際に対処するのは人間たち本人だ。僕らの助けがあれど、彼らが生き延びるのは彼ら自身の手で、じゃないといけないからね」

「手伝ってばかりじゃなくて、自立しないとね」

「……よくそんな難しいこと知ってるね……」

 Тоняが妹の成長の早さで自分の立ち位置がなくなることを危惧している様子を見て、また過保護に子ども扱いする気かと苦言を呈しそうになったが、長くなりそうなのでЕляはそのまま話を続けさせた。

「しばらく見守っていたら、村の状況はかなり良くなった。ほとんどの村人に恵んだ食料が行き渡り、新しい作物も順調に育っていた。Еляは、この村はもう大丈夫だと判断して、次の村に向かったんだ……」


閲覧数:56回0件のコメント

関連記事

すべて表示
bottom of page