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もじかきくらげ

第6話 天使の話:1

更新日:2021年7月28日

 雲もない澄んだ月の夜に、Еляは窓際で昔買った絵本を読んでいる。外は穏やかな風が吹き、開けた窓から彼女の髪を撫でていた。

 王子様が茨をかき分けているとき、Тоняが部屋の扉をノックした。Еляが絵本を閉じてすぐに扉を開けると、近くのケーキ屋さんの箱と新品の紅茶の缶を持ったТоняが立っていた。

「準備ができたよ。邪魔じゃなければ始めようか」

「これはケーキ?タルト?」

「いや、チョコレートプリンだよ」

「えりゃはにいにが世界で一番好き」

 Еляが両手を伸ばしたので、Тоняは上手にかがんで頬を撫でられて、横髪がぐちゃぐちゃになった。


 ちょうどポットのお湯が沸いた頃に、Еляは支度を終えてリビングにやってきた。

 らくがき帳を片手に椅子をよじのぼると、ティースプーンを受け取る。紅茶に砂糖をふたすくい入れてかき混ぜる。皿に出されたプリンが食卓に上げられて、Тоняが席についた。

「じゃあ、Еляはこれから聞きたいことを全部聞いてくれ。もちろん、それには全て答える。そして、それとは別に、僕は話すべきことをすべて話す。いいね?」

「うん」

 Тоняが仮面を外した。

「それで、その話を聞いて、ЕляがどうするかはЕляの自由。それから、僕たちがそれに対して何をするかも自由。その僕たちに対してЕляがどうするかも……また自由」

「うん」

 仮面の裏側を斜めに傾けて少し眺めてから、Тоняは仮面をテーブルに置いた。

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