雲もない澄んだ月の夜に、Еляは窓際で昔買った絵本を読んでいる。外は穏やかな風が吹き、開けた窓から彼女の髪を撫でていた。
王子様が茨をかき分けているとき、Тоняが部屋の扉をノックした。Еляが絵本を閉じてすぐに扉を開けると、近くのケーキ屋さんの箱と新品の紅茶の缶を持ったТоняが立っていた。
「準備ができたよ。邪魔じゃなければ始めようか」
「これはケーキ?タルト?」
「いや、チョコレートプリンだよ」
「えりゃはにいにが世界で一番好き」
Еляが両手を伸ばしたので、Тоняは上手にかがんで頬を撫でられて、横髪がぐちゃぐちゃになった。
ちょうどポットのお湯が沸いた頃に、Еляは支度を終えてリビングにやってきた。
らくがき帳を片手に椅子をよじのぼると、ティースプーンを受け取る。紅茶に砂糖をふたすくい入れてかき混ぜる。皿に出されたプリンが食卓に上げられて、Тоняが席についた。
「じゃあ、Еляはこれから聞きたいことを全部聞いてくれ。もちろん、それには全て答える。そして、それとは別に、僕は話すべきことをすべて話す。いいね?」
「うん」
Тоняが仮面を外した。
「それで、その話を聞いて、ЕляがどうするかはЕляの自由。それから、僕たちがそれに対して何をするかも自由。その僕たちに対してЕляがどうするかも……また自由」
「うん」
仮面の裏側を斜めに傾けて少し眺めてから、Тоняは仮面をテーブルに置いた。
Comments