「じゃあ、まずはЕляが知りたいことを教えて」
ТоняはЕляをまっすぐ見つめ、質問が始まる。Еляがらくがき帳を開いた。
「あのね、これはまず、要望なんですけど」
「うん」
「えりゃは、子ども扱いをされすぎだと思う。最近は前とちがって、家事も、Vtuber活動もがんばってるし。自分でお料理したり、一人でもお散歩に行ったりしたい」
Тоняは睫毛の下に指をくぐらせ、少し悩んだあとに答える。
「……そうだね。僕はЕляに対して過保護になりすぎているところはあった」
紅茶を混ぜて口をつける。Еляは兄が食事をしているところを初めて見た。
「分かった。僕といないときに火を使うのも、外出するのも許そう。Еляもすっかり大人になったしね」
「うん、ありがとう」
Тоняがまた優雅にスプーンを回す。Еляもチョコレートプリンを大事そうに食べ始める。固めのプリンが好きなのは把握済みらしかった。
「じゃあね、にいにが言う『話すべきこと』っていうのは、おじさんも知ってるの?」
「……まあ、ほとんどは」
ばつが悪そうに言い、Тоняは紅茶を飲み干してしまった。やっぱりТоняとИзяはあまり仲が良くないんだろうな、とЕляは紅茶を注いでやりながら思った。
「……じゃ、そもそもにいにはえりゃの本当のお兄さんなの?」
「ああ……血は繋がってないね」
さらに気まずそうに顔を背けられたので、Еляは回り込むように体を傾けて笑って見せた。
「でもえりゃはにいにのこと本当のお兄さんみたいに思ってる」
「そっか。それは嬉しいね……」
Тоняもつられて恥ずかしそうに笑った。Еляはプリンを小さくすくってまた口に運ぶ。Тоняの分のプリンもあるのだが、まだ冷蔵庫の中で冷やしたままだった。
「じゃあ、この間えりゃが聞いた知らないお部屋は何?」
「それを話すには。僕の『話すべきこと』を先に話す必要がある」
「あれってそんなに大事なんだ」
「大事なんだよ。それはちゃんと最後に話すから、安心して」
プリンも紅茶も全部無くなって、空の皿だけが残った。しばしの沈黙が流れ、ついにЕляが切り出した。
「────Еляは、人間じゃないなら『何』なの?」
Тоняは目を伏せて少し微笑んだ。そしてまた愛しい家族に、Еляに向き直って、話を始める。
「では話そうか。僕の『話すべきこと』を」
Commentaires