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  • もじかきくらげ

第8話 天使の話:3

更新日:2021年12月4日

「僕がЕляに伝えなければならないことはたくさんある。長くなるけど、いいね?」

 Еляは頷く。窓が一瞬影で遮られて、Тоняはそちらを見ながら話した。

「Еля、君はね、『天使』なんだ。例えでもなんでもなく、『天使』という種族だ」

「『天使という種族』……」

「そう。そして僕も、Изяも、同じだ。Еляと同じ『天使』なんだ」

 Тоняの背後の窓から陽光が差してきて、光の柱が肩に手を置いていた。逆光になった瞳はなお輝いていて、それが『天使』というものの義務のように感じた。


「でも、にいにもえりゃも、本に書いてある天使みたいに翼もないし『わっか』もないよ」

「そうだね。この世界で伝えられている天使とは見た目が違う。ただし、必要とあらば『そういう風』になることもできる」

 Тоняは仮面に目を移しながら答える。

「そもそも、Еляが普段関わっている人間たちがいる『人間界』も、この家がある場所も、元々僕たちが生まれ暮らしていた世界ではないんだ」

「別の世界から来たの?」

「別の世界、といえばそうだけど、簡単に言えば“パラレルワールド”かな。この世界とほとんど同じだけど、全く違う世界というか……見た目は似てるけど中身は違う、程度に思っておいてくれ」

 Еляは少し前に読んだパラレルワールドで冒険する物語のことを思い出していた。そして、一見生活には役に立たなさそうな『娯楽』のための情報収集も、案外人生において大事なのだなあと他人事のように思った。

 そんなЕляの頭の中はお見通しなのか、Тоняはぼんやりした頬をつついて続きに意識を戻させる。

「だから、この人間界の『天使』や『天界』は……『僕たち』とは少し違うんだ」

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