「僕がЕляに伝えなければならないことはたくさんある。長くなるけど、いいね?」
Еляは頷く。窓が一瞬影で遮られて、Тоняはそちらを見ながら話した。
「Еля、君はね、『天使』なんだ。例えでもなんでもなく、『天使』という種族だ」
「『天使という種族』……」
「そう。そして僕も、Изяも、同じだ。Еляと同じ『天使』なんだ」
Тоняの背後の窓から陽光が差してきて、光の柱が肩に手を置いていた。逆光になった瞳はなお輝いていて、それが『天使』というものの義務のように感じた。
「でも、にいにもえりゃも、本に書いてある天使みたいに翼もないし『わっか』もないよ」
「そうだね。この世界で伝えられている天使とは見た目が違う。ただし、必要とあらば『そういう風』になることもできる」
Тоняは仮面に目を移しながら答える。
「そもそも、Еляが普段関わっている人間たちがいる『人間界』も、この家がある場所も、元々僕たちが生まれ暮らしていた世界ではないんだ」
「別の世界から来たの?」
「別の世界、といえばそうだけど、簡単に言えば“パラレルワールド”かな。この世界とほとんど同じだけど、全く違う世界というか……見た目は似てるけど中身は違う、程度に思っておいてくれ」
Еляは少し前に読んだパラレルワールドで冒険する物語のことを思い出していた。そして、一見生活には役に立たなさそうな『娯楽』のための情報収集も、案外人生において大事なのだなあと他人事のように思った。
そんなЕляの頭の中はお見通しなのか、Тоняはぼんやりした頬をつついて続きに意識を戻させる。
「だから、この人間界の『天使』や『天界』は……『僕たち』とは少し違うんだ」
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